みなさん、こんにちは。ふみかんです。
読書感想文シリーズ第二弾。
今回は「嫌われる勇気(著書:岸見一郎、古賀史健)」についてです。
目次
本のあらすじ
古都のはずれに、一風変わった哲学者が住んでいる。
彼曰く「人は変われる。世界はシンプルである。誰もが幸福になれる。」
その主張に納得できない青年は、議論をし、できれば論破してやりたいと考え、その哲学者(哲人)を訪ねたのであった。
哲人は哲学者でありながら「アドラー心理学」を思想に取り入れている。アドラー心理学とは哲学と別物ではなく、哲人の専攻しているギリシア哲学の同一線上にある思想であるとのことだ。
アドラーの教えは青年の考える「常識」を次々と覆していき、青年は悩み反発しながらも議論を進めていく。
目的論と原因論
アドラー心理学の中でも特に印象に残ったもののひとつが「目的論」です。
目的論とは、まず最初に何か目的があり、そしてそれを遂行するために行動を選択しているという考えです。
原因論
目的論と逆の立場をとるのが「原因論」です。かの有名な心理学者フロイトは、今起こっている出来事は過去の出来事が原因となってその結果がもたらされているという原因論を唱えています。
例えば過去にいじめや虐待をされた経験があるから引きこもりになる、親が離婚をしたことがトラウマで自身も結婚できずにいる、などです。
理解しやすく納得できる理論ですがアドラー心理学ではこれを否定します。
過去の原因によって未来が決まってしまうのならば、過去に似た経験を持つ者は皆同じような現在を過ごしていることになってしまう。また、自身の力によって現状を変えることができないという証明になってしまうのです。
目的論
一方目的論は先に述べたように、「まず最初に何か目的があり、そしてそれを遂行するために行動を選択している」という考えです。
引きこもりの例であれば、「周りの注目を集めたい」「大切に扱われたい」といった目的のために引きこもっているのであり、過去のいじめや虐待を利用しているというのです。
容易に受け入れられないような厳しい考え方です。
また、本の中では次のようなふたつの例が出てきます。
①赤面症の女学生
哲人のもとに「赤面症を治したい」という女学生が訪れました。哲人は「治ったらどうしたいか」を尋ねます。女学生の望みは「意中の彼に告白してお付き合いしたい」とのこと。
これを原因論で考えると赤面症であるから自信がなく告白できないという構造。
ですが目的論で考えると、真の目的として「振られるのが怖くて告白したくない」というものがあるのでしょう。告白しなくて良い理由として赤面症を利用して嘆いているのです。
仮に哲人が女学生の赤面症を治すことができたとして、彼女は今まで赤面症を理由に嘆いていた事態が何一つ変わらないことに気付くと、結局哲人のもとに「赤面症に戻してください」と再び訪ねてくるだろうといいます。
②怒りの感情
先日青年はとある飲食店でウエイターに飲み物をこぼされてしまいます。買ったばかりの一張羅を汚された青年はついカッとなって怒鳴ってしまいました。普段は温厚で怒鳴り声など上げないのに。
青年は「これはどう考えたって目的論では説明できないでしょう」と哲人に迫ります。
しかし哲人は「いいえ。あなたは大声を上げるという目的の為に怒りの感情を利用したのです」と言いのけます。
怒りがコントロール不可能な感情だとしたら、その日もし青年がたまたま刃物を持っていて「ついカッとなって」ウエイターを刺してしまってもそれは仕方のないことなのでしょうか。極端な例ではありますが、「ついカッとなってしまった」という理由は到底まかり通るはずがありません。
哲人曰く、青年には「ウエイターを威圧し屈服させたい」という目的があって、その為に大声を出したのであり、その理由付けとして怒りを利用したのです。
納得のいかない青年に、哲人はこんな例も示します。
ある母親と娘が激しく口喧嘩をしていた時、家の電話が鳴りました。「もしもし」母親はまだ不機嫌さの残る口調で電話に出ましたが相手が娘の担任だと分かると急に声色を変えて話し始めます。しばらく余所行きの声で会話をした後電話を切り、娘と向き合うと再び血相を変えて怒鳴り始めるのでした。
つまり「怒りとは出し入れ可能な道具」なのです。
目的論で考える
青年は自分が嫌いで、可能ならば他者のようになりたい、人生をやり直したいと考えています。
しかし哲人のいう目的論で考えれば「現状のまま変わりたくない」という目的があって、変わらないという選択をしていることになります。
人が変わる(本ではライフスタイルを選択しなおす、という言葉を使っています)のには勇気が必要です。変わった先でどんなことと新しく向き合わなければいけないのか未知であり不安だからこそ、人は多少不便があったとしても本能的に現状維持を求めてしまうのです。
つまり青年は「変わりたい」と嘆きつつも本当の目的として「変わるために勇気を出して踏み出す、ということを避けたい」というものがあり、自分の性格や能力を否定し、変わらないという選択を自分で選んでいるのです。
青年は哲人のいう「目的論」がなかなか受け入れられません。
なぜなら今自分が苦しんでいることは過去の経験や環境など関係なく、全て自分が選んでいるのだ、全てお前が悪いのだと断罪されているように感じてしまうからです。
哲人は「断罪などしていません」と諭します。
これまでの人生に何があったとしても、今後の人生には何の影響もありません。自分の人生を決めるのは今ここに生きるあなた自身なのです。つまり、過去に縛られる必要は無いのです。
全ての悩みは対人関係
次に「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」という考え方です。
アドラーは、宇宙の中でただ一人でいれば悩みなど無くなると言っています。
対人関係だけではなく、自己に向けられた悩みがあるとして、青年は強く反発します。
現に今自分は、自分の容姿や性格に悩んでいるのだと青年は主張しますが、哲人は「劣等感」について説明しながら議論を進めます。
劣等性・劣等感・劣等コンプレックス
哲人は身長が155cmと平均より低く、昔は「あと20cm、せめて10cmだけでも高ければ…」と考えていました。
しかし友人は、悩む哲人に「大きくなってどうする。お前には人をくつろがせる才能がある」と言ってのけます。
確かに大きくて屈強な男性には、威圧感を感じることはあっても人を安心させくつろがせることは難しいでしょう。
つまり、155cmだからこそのメリットがあるということです。
そしてこれは客観的な事実としての劣等性ではないということです。
つまり人より身長が低いことを劣っていると考えるのは、客観的な劣等性ではなく主観的な劣等感なのです。
①劣等感
劣等感とは主観である。それはつまり自分で選択できるということになります。
先の例でいえば哲人の身長は変えることはできませんが、「人より背が低いことは劣っている」と考えることもできれば「人をくつろがせるのに最適な身長だ」と捉えることもできるということです。どのような考えを持つかは完全に自分自身で選択可能なのです。
そして劣等感とは誰もが抱くものです。それは悪いことではなく健康で正常な状態だといいます。
なぜなら人は劣等感を持つことでより成長しようと行動することができるからです。
一般的に劣等感を抱く必要のないと思われるような成功者(成功した企業の社長、世界で活躍するトップアスリート等)でさえも、理想の状態から劣っていると感じ劣等感を持つことで更に努力を重ね向上していくのです。
他者との比較ではなく理想の自分との比較によって生まれる劣等感こそが、健全な劣等感の在り方と言えます。
②劣等コンプレックス
現在「コンプレックス」と「劣等感」は同義であるように使われます。しかしこれは誤用だといいます。
先述した通り、劣等感は努力や成長を促す良いきっかけとなります。
一方、劣等コンプレックスとは、劣等感を言い訳に使い始めた状態を指します。「AであるからBできない」と決めつけることです。
つまり「学歴が低いから成功できない」という考え方です。
これは目的論で考えると「成功したくない」という目的がある状態でしょう。一歩を踏み出すのが怖い、現実的な努力をしたくない、遊んで楽しんでいる現状を変えたくない、つまり「ライフスタイルを変える勇気を持ち合わせていない」のです。
さらに、「学歴が低いから成功できない」という主張は言い方を変えれば「学歴さえあれば私は成功できるのだ」と暗示することにもなります。学歴が無いから成功できないだけで、本当は自分は有能なのだ、と考えています。自身の価値や可能性を否定したくないから、言い訳として学歴を利用するのです。
対人関係
劣等感・劣等コンプレックスについて説明したところで、自分で完結する個人の悩みというのも、他者と比較して生まれる主観的な劣等感だということが理解いただけたと思います。
比較する人がいない、つまり宇宙にただ一人で存在している場合は自分の学力が低いだなんて思うことも無く、背が低い、顏が悪いなどと思うことも無いはずです。
他者との比較で生まれる劣等感は、他者を、ひいては世界を「敵」だとみなすようになります。
人々は自分のことをせせら笑い、隙あらば攻撃しようと考えている。そんな風に感じていれば心の休まる暇がなく、他者を信じることができません。
昔、哲人の友人が、長い時間鏡を見ながら髪を整えていると彼の祖母が「おまえの顔を気にしているのはおまえだけだよ」と声をかけたそうです。
彼は他者から攻撃されることを過剰に恐れて身なりを気にしていましたが、祖母からの言葉を受けて少し生きるのが楽になりました。他者の存在を気にすることによって生じていた悩みが、自分の考え方が変わったことによって、改善されたのです。
人は変われる。世界はシンプルである。誰もが幸福になれる。
ここまで「目的論」についてと「すべての悩みは対人関係であること」について書きました。
ここで一度、冒頭で述べた哲人の主張について改めて考えてみましょう。
人は変われる
フロイトの唱える「原因論」では、過去の出来事が原因となって結果がもたらされるという考えでした。
しかしアドラー心理学ではあくまで、今後の人生を決めるのは今ここにいる自分自身だと主張しています。
これは自分が勇気をもって選択することで自分自身を、そして世界を変えることができるということです。過去のトラウマによって言い訳することを認めない厳しい考えでもありますが、自分の勇気次第で自由に選択できるというのは希望に満ちた考えにも思えます。
また自分が劣等感を感じている部分は客観的な事実としての劣等性ではなく主観的な劣等感だと認識することも、人が変わるきっかけとなるでしょう。
「この欠点のせいで成果が出せない」と考えていた固定観念を解き放ち、理想の自分とのギャップから生まれる劣等感をバネに成長していくことができるのです。
世界はシンプルである
世界は複雑で混沌としていると考えている人は、自らがそのように世界をとらえているのです。
サングラスをかけた状態で「世界は暗い」と嘆いているのと同じで、ただサングラスを外せばよいだけのことです。しかしそれには勇気が必要で、外した結果その眩しさに再びサングラスをかけたがる人もいるでしょう。
哲人の言うサングラスを外すというのはライフスタイルを選びなおすということです。自分の価値観、物の見え方をまるっきり変えることができます。その分勇気が必要な行為でもあります。
過去のしがらみに囚われることなく、今自分がどうするか。
他者に嫌われることを恐れたり承認されることを目的として他者の人生を歩むのではなく、自分自身がどう選択をするか。
そういった視点を持つことで世界はシンプルな姿を取り戻します。
誰もが幸福になれる
本著では「全ての悩みは対人関係」と主張しており、それは裏を返せば「我々の幸福もまた、対人関係の中にあるのだ」とも述べています。
「私は誰かの役に立っている」という思い(=貢献感)が自らの価値を実感させ、幸福になれるというのです。
この貢献感は「承認欲求」と勘違いされやすいですが、これらには明確に違いがあります。
承認欲求は誰かの承認を得るために他人の人生を生きることに対し、貢献感は自分が自分であることを受け入れ(=自己受容)た状態で「私は誰かの役に立っている」と自分自身が感じることです。
幸福を感じるには「他者にどう思われるか」を考える必要はありません。
自分自身を受け入れ、他者を敵ではなく仲間と捉え、自分の存在が誰かの役に立っていることを実感することが必要なのです。
これは生まれ育った家庭や学歴等に関係なく、誰もが自分次第で感じることができます。
しかしこれは、現在誰もが幸せであるということには直結しません。
人は、世界中の人々全員に好かれることなどできません。何をやってもあなたのことを嫌う人は必ず少数います。その人のことばかりを気にしていてはいけません。自己を受容して貢献感を持つためには、嫌われる勇気が必要なのです。
そしてそれこそが幸せになる勇気とも言えるでしょう。
勇気を持って自分のライフスタイルを選択していくことで、誰もが幸福になれるのです。
最後に
この本では、ここで書いた以外にも「課題の分離」「共同体感覚」「人生は連続する刹那」といった重要な考え方が多く出てきます。
この記事の内容にもし興味を持っていただけたら、ご自身で本を読んでみることをお勧めします。
割と中身がギッシリの重めの本ですが、音声だと無理なく繰り返し聞けるし簡単に復習できるので良いかもしれません。(私はAudibleで聞きました^^)
ただ自分で理解を深めながら自分のペースで読み進めるという意味では紙の本でも読みたいと思っています。
この本の内容はするすると頭に入ってくるというよりはじっくり考える系で、私自身は繰り返し聞くことで定着してきたのですが、作中の青年は(本なのだから当たり前ですが)とても物分かりが良く哲人の言葉を自分の言葉で言い換えたり以前言ったことを当然覚えてたりするのが素晴らしいです。
かと思えば急に「難しい…難しいですよ!」と急についてこれなくなったりするのが少し面白かったです。笑
おそらくそういう部分こそが作者がより力を込めて説明したい部分だったのかなと思います。
また、青年が感情を表に出しやすい気質なのですが、「人でなしめ!」「この悪魔的教唆め!」といった独特の言い回しにいちいち笑ってしまいました。笑
読書による気づきは自分の人生を変えることがあります。
この記事も、読んでくださったあなたの人生を変えるきっかけになったら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!(*´▽`*)
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